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東京高等裁判所 昭和36年(く)5号 決定

少年 N(昭一七・三・三〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は要するに、少年は印旛少年院仮退院後更生の道に歩み出したところ、僅かの心のゆるみと友人とのつきあいから飲酒のうえ本件傷害の非行を行つたのであるが、現在その非行を深く反省し、被害者に対し示談を申し込みその許しを受けたし、又自分自身誰の指図も受けずに社会において更生できる自信があるのであり、親や勤務先の社長も心配してくれている状況であるから、特別少年院送致の言渡をした原決定は著しく不当である。それ故原決定の取消を求めるため本件抗告に及んだというにある。

よつて少年に対する保護事件記録並びに調査記録を調査するに、原裁判所は、少年に対する保護事件につき昭和三五年一二月一六日傷害の事実を認定して特別少年院に送致する旨を言い渡したものであるところ、少年は、前に、窃盗、遺失物横領、恐喝等の非行や不良交友、家出等の虞犯的行動に及んだので、昭和三三年一二月二四日原裁判所で保護観察決定を受けたところ、更に反省の色なく僅か三ヵ月位で再び家出、不良交友を始め、そのあげく二十数回に及ぶ窃盗の非行を敢えてしたので、昭和三四年六月三日原裁判所で中等少年院送致決定を受け、印旛少年院に収容され、昭和三五年四月二六日同院から仮退院を許され帰宅したのであるが、その後又不良交友、夜遊び、飲酒等の不健全な生活を送るようになり、遂に同年一一月七日本件傷害の非行をなすに至つたものであつて、少年の性格は不安定で自己顕示性著しく、不良交友関係も断ち切れず、家庭においても保護者に十分な保護能力があるとは見受けられないし、これに前記少年の非行歴等調査審判に現われた一切の事情を併せ考えると、少年の犯罪的危険性は高度で、在宅保護の措置ではこれを除くこと極めて困難であると認められるので、少年の犯罪的危険性を除きその健全な育成を図るためには、少年の犯罪的傾向が進んでいる点を特に考慮に入れれば、少年を特別少年院に送致するのが相当と考えられる。それ故、これと同趣旨に出た原決定は正当であつて、本件抗告はその理由がない。

よつて少年法第三三条第一項後段、少年審判規則第五〇条により本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 長谷川成二 判事 白河六郎 判事 関重夫)

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